IBD(炎症性腸疾患)|福岡市南区寺塚の内科・消化器内科 - あべしゅん内科・内視鏡IBDクリニック

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IBD(炎症性腸疾患)

IBD(炎症性腸疾患)|福岡市南区寺塚の内科・消化器内科 - あべしゅん内科・内視鏡IBDクリニック

IBD(炎症性腸疾患)とは

IBD

身体には「免疫系」というものがあります。免疫系は、体内に入ってきたウイルス、細菌などの異物を体外に追い出す働きをします。
免疫系がそういった異物を追い出す際には、腫れや痛み、発熱などが起きることがあります。これらの反応のことを「炎症」といいます。この炎症が腸に起こる病気のことをまとめて「炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)と言います。」
IBDは、広い意味では腸に炎症を起こす全ての病気を指しますが、狭い意味では「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」のことを意味します。

潰瘍性大腸炎(UC)とは

UCは大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。
特徴的な症状としては、血便に伴うまたは伴わない下痢と、よく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。この病気は病変の拡がりや経過から下記のように分類されます。

  1. 病変の拡がりによる分類:全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型
  2. 病気の分類:活動期、寛解機
  3. 重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症
  4. 臨床経過による分類:再燃寛解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型

発症年齢のピークは男性で20〜24歳、女性では25〜29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別には差はありません。

クローン病(CD)とは

CDは主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こりえますが、小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が後発部位です。
非連続性の病変(UCと違い病変と病変に正常部分が存在すること)を特徴とします。腹痛や下痢、発熱、体重減少、肛門痛などの症状がみられます。10代〜20歳代の若年者に後発します。発症年齢は男性で20〜24歳、女性で15〜19歳が最も多く見られます。男性と女性の比は、約2:1と男性に多くみられます。

IBDの原因

原因は特定されておらず、根治に至る治療のない病気のため、難病とされています。

IBDの種類

IBDには、特異性腸炎(特異的炎症性腸疾患)と非特異性腸炎(非特異的炎症性腸疾患)があります。

特異性腸炎

ウイルスや細菌が原因で起こる感染症や、薬剤が原因で起こる急性出血性大腸炎など、はっきりとした原因で起こるIBDです。

特異性腸炎の主な例

  • ウイルスや細菌などが原因である感染症
  • 抗生物質などの薬の投与が原因である急性出血性大腸炎、偽膜性腸炎
  • 放射能治療の際の、照射などが原因である物理的刺激
  • 血液の循環が悪いことが原因である虚血性大腸炎、静脈硬化性大腸炎
  • 膠原病などの全身性疾患によって起こる特異性腸炎
非特異性腸炎

はっきりとした原因がわからないIBDです。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、どちらも非特異性腸炎に該当します。そのほか単純性潰瘍やベーチェット病なども非特異性腸炎に含まれます。

IBDの症状

下痢、腹痛、血便などの症状をひき起こします。
IBDの種類や、炎症が腸のどの辺りで起こっているかによって症状や強さが異なります。潰瘍性大腸炎では血便を発症することも多いですが、クローン病では血便の発症はあまり多くありません。
また、発熱や倦怠感などの全身の症状を惹き起こすこともあります。
その他、口の粘膜の潰瘍、目の炎症、手足の関節の痛み、皮膚の炎症など、さまざまな症状を惹き起こすことがあります。
クローン病では、およそ半数に「痔瘻」という合併症が生じることがあります。

内科的治療

①5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤

  • サラゾピリン®
  • ペンタサ®
  • アサコール®
  • リアルダ®

5ASA製剤には従来からあるサラゾピリンと、その副作用を軽減するために開発されたメサラジン(ペンタサ、アサコール、リアルダ)があります。経口や直腸から投与され、腸の炎症を抑えます。
炎症を抑えることで下痢、血便、腹痛などの症状は著しく減少します。また、症状が消失しても、再燃予防のために内服し続ける必要があります。

②栄養療法

栄養療法は、主にCD患者で行われ、脂肪をほとんど含まないアミノ酸を主成分とした成分栄養剤(エレンタール®)を用います。
目安として1日の食事の半分をエレンタールで補うことができれば、再発の予防にもなる報告があります。エレンタールは栄養の状態を改善し、受け入れられれば副作用がほとんど無い安全な治療です。

③ステロイド製剤

  • プレドニン
  • プレドニゾロン
  • ゼンタコート
  • レクタブル

経口や直腸からあるいは経静脈的に投与されます。この薬剤は中等症から重症の患者さんに用いられ、強力にまた即効的に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。
最近では副作用の少ない、肝臓で速やかに分解されるブデソニドという新しいステロイドを使った内服薬や注腸フォーム剤があります。

④免疫調整剤:チオプリン製剤

  • イムラン
  • アザニン
  • ロイケリン(保険未承認)

免疫調整剤(チオプリン製剤)は、UCの場合はステロイド製剤を中止すると病状が悪化してしまうステロイド依存の場合に、ステロイドから離脱するために使用される薬です。CDの場合はTNFα抗体製剤(特にインフリキシマブ)の効果を長期に持続させるために使用されます。
新しく服用を始める患者さまには、2019年からNUDT15の遺伝子のタイプを調べることで、安全に服用できるかどうかを確認できるようになりました。

⑤抗TNFα抗体製剤

  • インフリキシマブ(レミケード®)
  • アダリムマブ(ヒュミラ®)
  • ゴリムマブ(シンポニー®:潰瘍性大腸炎のみ)

IBD患者さまにおいて炎症を起こす原因となっているTNFαという炎症のタンパクを抑える効果があります。UCの患者さまでは、免疫調整薬のみではステロイドから離脱できない場合に使用します。CDの患者さまにおいては診断してから最初から使うことが多く、肛門の痔瘻にもよく効く製剤です。
炎症を抑える効果が認められた場合は、インフリキシマブは8週ごとに点滴注射、アダリムマブは2週ごとに皮下注射(自宅で投与可)、ゴリムマブは4週ごとに皮下注射(自宅で投与可)が維持治療として行われます。

⑥抗α4β7インテグリン抗体製剤:生物学的製剤

  • ベドリズマブ(エンタイビオ)

ベドリズマブ(エンタイビオ®)はリンパ球の表面にあるα4β7インテグリンという物質に作用し、リンパ球が腸管粘膜に侵入するのを抑える点滴製剤です。腸管にのみ作用するので安全性が高い治療薬です。
炎症を抑える効果が認められた場合は、8週ごとに点滴投を行います。

⑦抗IL-12/23抗体製剤:生物学的製剤

  • ウステキヌマブ(ステラーラ®)

ウステキヌマブ(ステラーラ®)は炎症を引き起こすインターロイキン12およびIL-23というタンパクを抑える薬剤です。2017年からCDに、2020年からUCに使用可能です。初回は点滴で、2回目以降は8週ごともしくは12週ごとに皮下注射(病院にて注射)を行います。

⑧ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤:分子標的低分子化合物

  • トファシチニブ(ゼルヤンツ®:潰瘍性大腸炎のみ)
  • フィルゴチニブ(ジセレカ:潰瘍性大腸炎のみ)
  • ウパダシチニブ(リンヴォック:潰瘍性大腸炎のみ)

細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群はキナーゼと呼ばれ数多く種類が存在しますが、JAKはこのうちの一つであるヤスキナーゼ(Janus kinase)の略称で、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類があります。JAKを抑えることで炎症を引き起こす物質を抑えることができる薬剤です。ゼルヤンツはJAK1〜3すべてを抑えます。ジセレカはJAK1のみ抑えます。ゼルヤンツは特に帯状疱疹に気をつける必要があります。

⑨インテグリン阻害剤:カロテグラスト(カログラ)

2022年に承認されたカログラは、日本で開発された世界発のインテグリンを阻害する内服薬(低分子化合物)です。炎症を引き起こす原因のリンパ球が大腸の粘膜に入らないようにすることで、潰瘍性大腸炎の炎症を抑えることができます。